IMG_8904_edited.jpg

会長挨拶

当会が発足したのが2006年でした。当初から狂犬病に関するあいさつは誰もが異口同音に「わが国から狂犬病がなくなって○年。しかし、わが国はいつ狂犬病が発生してもおかしくない状況にある」でした。

 一国民としてはこのまま永久にこの言葉が使われていくことを願うばかりですが、残念ながらそのあいさつが使えなくなる日はきっとやってくるでしょう。

 我々獣医師はただワクチン接種率の向上を訴えていくだけでいいのでしょうか。接種率が向上すれば狂犬病は発生しないのでしょうか。否、100%注射をしていたとしても狂犬病は発生します。免疫の壁は犬が群として生活をしている際には有効であり、必要な策と言えますが、適正に管理されている状況ではここに特化した対策をすることが的の中心を射ているとは言いにくい。むしろ、注射をしていればよいと思考停止に陥っている状況は危険とさえ思えます。

大切なことは、発生をにらんでどう準備策を進めておくかです。

いかに早く発生を探知し、封じ込めを行えるか。

「臨床の現場での早期探知」

これが非常に大切です。私たちが早く確実に気付かないと狂犬病予防法第8条のスイッチは押されないのです。私たちが適正に動物の狂犬病を疑うことができなければ、もし被咬傷者がいてもPEP(咬まれたりした後に行う発症予防処置)は実施されず、その方の命を助けることができないかもしれません。

 

2012年に私たちは「犬狂犬病の症状と狂犬病臨床診断法の一例」という発症犬の動画を多数収載した臨床診断のための教材(DVD)を制作しました。そして、いよいよその第2版が完成しました。第2版の特徴は狂犬病を発症した犬が時間とともにどのように徴候が変化していくかを示したものです。第1版と合わせて視聴すると非常に有用であると考えます。

 

大正5年に発刊された「京都府狂犬病流行誌」に、こういう記述がありました。

「当府における本病の発見は人をもって最初とし、 狂犬病なるものは一種の獣畜間伝染病にして多くは獣畜、なかんずく犬の間に流行をきたし遂に人類、これが咬傷の不幸に遭遇し、恐水病を発するの例なるが如し

当府においては未だかつて本病の襲来を受けしことなく、したがって何らこれに対する設備を加えざりしに、突然人をして本病を発せしめ、初めてその病毒の侵入し居ること承知し、すぐに百方これが予防の方法を講じたるも時すでに遅く、狂犬広く各所に出現し、被咬傷者また続々発生するに至れり」

 

(京都府における狂犬病の発見は人の患者が最初であり、狂犬病というものは一種の人獣共通感染症で、多くは動物特に犬の間に流行が始まり、それが人への咬傷につながり狂犬病を発症するのが常である。しかし、京都府においてはこれまで本病の発生がなく、何ら対策もすることがなかった。そういう状況の中で、人が突然恐水病を発症し、そこで初めて狂犬病が発生していることに気付いた。すぐにいろいろ対策を施したがすでに手遅れで、狂犬病になった犬があちこちに出現し、咬まれる人が多数出てしまった。)

 

私たち関係者が常に狂犬病のことを意識して生活していれば同じシナリオをたどることはないでしょう。

今後の教訓としたいと思います。